キミの誕生日
無口と不器用はイコールだったろうか。はて。
……そう考えている内に手を引かれ、食堂に辿り着いた。ゲムヲはそこでぱっと手を離し、近くの席を指定してはおいでおいでと手招き。
全く、本当に忙しない。アイクは彼とは向き合う位置にある椅子に腰を下ろし、買ってきた物もテーブルの上に置いた。ゲムヲはひょいとそれを覗いてから、奥にある台所へと走っていって。大方、お茶やケーキ用の小皿を取りに行ったのだろう。
数回に分けて、彼はアイクが予想していた通りの物をテーブルの上に並べると、向かい側の椅子に腰掛けた。それから、まずは包装された花を差し出して。
「ああ……」
いざ、渡されてみると反応に困るものだな。
そんな半端な反応を示すアイクを気にする様子もなく、ゲムヲはケーキを崩さないよう小皿の上に慎重に置いた。それからふと、ケーキも花も多いことに気付く。
「……、」
ゲムヲは素早くポケットからメモ用紙を取り出し、ペンを走らせて。
『これ、どうしたの』
アイクは少し困ってしまった。彼にそっくりそのまま返すつもりだったが、肝心の意図が未だ掴めていない。こうなったら直球で聞いてみるしかないか。
「お前こそ、これは何のつもりだ」
我ながらストレートだ。ゲムヲは数回瞬きを繰り返し、見つめて。
「今日は特別な日なのか?」
続けて訊ねるのはしつこいかとも思ったが、彼は素直にページを捲ってペンを走らせた。それからひっくり返し、その文章を見せる。
『誕生日』
アイクは小さく目を開いた。
『だから、特別な日だよ』