キミの誕生日



女性店員から花を受け取ってフラワーショップを後にする。

……傍できょろきょろと辺りを見回している彼は、先程アイクが買った花に対して興味を持っていないようだった。そちらの方が都合はいいが、微妙な気持ちだ。

それにしても、こうも人が多くては目的の店が見つけづらいらしい。ぴょんぴょんと跳ねる様を見つめ、我ながら肩車をしてやればいいのに、とさえ思う。

「……ん」

どうやら見つけたらしい。

いい加減肩車くらいさせてやろうと手を伸ばしたが一歩遅かったようで、その手は小さな手に掴まれるとぐいと引かれた。小走りになりながら後をついていく。


「あらあら、お父さん連れてきたの」

次に訪れたのはケーキ屋だった。

先程の店員より若くはないが、その女性店員はアイクの手を引いてきたゲムヲに気付くとにこりと笑いかけて。ゲムヲは首を傾げたが、迷った末に頷いた。

……口で説明のできない彼だ。面倒だったのだろう。

「それで、今日はどれにしましょうか」

ゲムヲはアイクの手を離すと、ショーケースの前まで移動して硝子に両手を置き、中を覗き込んだ。定番のショートケーキに始まって人気のチョコレートケーキ、大人の風味ティラミス、落ち着いた味わいのモンブラン……と、種類は豊富。

「……、」

中でもこのショコラフリュートという、いわゆる当店オリジナルのショコラケーキには目を引かれた。アイクは遠目にだが、じっと興味深そうに見つめて。

ちらっとゲムヲが振り向いた。そして、ショーケースを軽くノック。

「はいはい。これね?」

女性店員が訊ねると、ゲムヲは頷いて。
 
 
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