キミの誕生日
「……幸せ者だな」
アイクはふっと笑みをこぼす。
「俺も。ここにいる連中も」
そう言うと、ゲムヲは嬉しそうに肩を竦めて笑った。
するとアイクは立ち上がり、回り込んでゲムヲの元へ。不思議そうに見上げていた彼を何の前触れもなくひょいと抱き上げ、ぎゅっと抱き締める。
「俺からもいいか?」
ゲムヲは小さく頷いて瞼を閉じる。
「おめでとう。……それから、ありがとう」
俺はお前に、出会えてよかった。
「……花とケーキ、多かっただろう。真似事で申し訳ないが」
「ううん、嬉しいよ。凄く嬉しい」
そう言った後で、ゲムヲはふと思い出したように首を傾げた。
「変じゃなかった?」
「……ああ」
「嫌いじゃない?」
「えっ」
やはり、無口と不器用はイコールなのかもしれない。
「……馬鹿を言うな」
アイクはくすっと笑って。
「嫌いなら、こんなことしない」
桜色の唇に蓋をした。――午後の素敵な誕生会。
end.
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