キミの誕生日
誕生日? 少なくとも今日ではなかったはずだが。
「ゲムヲ、俺の誕生日は」
『知ってるよ』
言い終える前にゲムヲがメモ用紙に書いて見せてきたのでアイクは一旦口を閉じたが、その一瞬の隙を突いて彼の持っていたメモ用紙を取り上げた。
「……なら、どうしてこんな真似をする」
取り返そうと伸びてきたゲムヲの手は、そこでぴたりと止まって。
そろそろと手を引っ込めて両手を自分の膝の上に置き、顔を俯かせる。……少し、乱暴すぎただろうか。落ち込んでいるように見えて、アイクは口を閉ざした。
「……誕生日は」
ぽつり、とゲムヲは声を洩らして。
「生まれたことをお祝いする儀式……だから」
きゅ、と拳を緩く握って続ける。
「だから毎日……おめでとう、ありがとうって。……お祝いする」
ああ、そうだったのか。
彼はただ単純に不器用なだけなんだ。どんなに言葉が足りなくても、それでもただ伝えたい一心で。――誕生日、おめでとう。
生まれてきてくれて、ありがとうって。
「っ……」
大好きだから。……本当にただ、それだけなんだ。
「……変?」
かくんと首を傾げる彼に、自分は何をしてやれるだろう。
……多分、それは。