世界の終わり



それを聞いてもまだ暫くはマスターも無反応だった。ローテーブルの上に積まれた他の依頼届を適当に分けては、その一枚を手に取って眺めている。

「……マスター」
「たまたま居ないだけだ」

……意地張ってる。

「そうじゃないでしょ」
「本当にそうだと言うのにどうしてそう言い切れる」
「いつも一緒だったのに。二人が一緒じゃないのはおかしい」
「だからそれは」
「喧嘩でもしたの?」

マスターははたと口を閉ざした。

図星なのだろうか。そう思っていた片隅であることを思い出す。それは夜中スピカから突然送られてきた不審なメッセージである。


『この世界が終わるかもしれない』


「……珍しいね」

確かにクレイジーは感情的になりやすく極めて短気だ。双子の兄弟ではあるが弟と異なって一歩後ろに下がり、弟の気を鎮めるのが得意であるはずのマスターが一体どうして譲らなかったというのだろう。


神様が兄弟喧嘩、か。

確かに、それだけ酷かったとなれば世界の終わりを思うかもしれない。
 
 
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