世界の終わり



弟は何故かギョッとした様子で、

「なっなんで兄さんが泣くんだよ!」

言われて、右手を頬に伝わせ目尻に触れる。

「……本当だ」

状況に反して呑気な声だった。

「なんで」

その内に自分がどうして泣いているのか分からなくなって、

「……なんで」

拭っても拭っても止まらなくなって。

「馬鹿は、お前じゃないか」


羨ましかった。


何でも造れるから。何でも一人で熟してしまうから。そこは確かに同じ世界であるはずなのにまるで透明な硝子の部屋の中隔離されているようで。傍観するしか術のない自分には例え壊してしまっても触れることの叶う弟が羨ましくて。

時には疎ましくなって。


それでも。

嫌いにだけはなりたくなくて。


「……なんだよ」

クレイジーは肩を跳ねた。

「兄さんの方が馬鹿じゃんか」

俺は首を横に振った。歩み寄って抱き寄せる。

「……お互い様だ」
 
 
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