世界の終わり



ぽつりと洩らした声が苦しくて。

「クレイジー」
「もういいよ兄さんの馬鹿!」

そう叫んだ声が今だけはあまりにも触れがたい。

辛くて、寂しくて。

「……兄さんはずるい」

ぽたぽたと雫が床に滴り落ちる。

「優しくてずるい」

目を丸くした。

「僕の持ってないもの全部持っててさ。何でも出来て、何でも造れて」


その時やっと分かった。

彼を密かに傷付けてきた正体が。


「……嫌いになるわけない」

弟はぽつりと言った。

「大好きだよ、でもさ」

自分の胸に手を置いて服を握る。

「言えるわけないじゃんいっつもいっつも。兄さんは笑って許すのに」


日に日に募る劣等感。

愛する弟を苦しめていたのは。


「……俺、だったのか」
 
 
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