世界の終わり
「……?」
その日は珍しく黙っていた。
いつもなら「皮肉を言うのはこの口か」と飛びかかってくるのに。
「……僕だって」
ぽつりと洩らした声に実験の手を止めて見つめる。
「好きでこんなカラダになったんじゃない!」
一方的で。投げ遣りで。
でもそれは今まで言わなかっただけのことと気付いてしまえば何となく慣れた。
どんなに気に障っても。気に入らなくても。
それだっていつか忘れてしまう。だから頃合いを見て、適当に。
「……本当は僕のことどうでもよかったんじゃない」
言いくるめてしまえば。
「何でも出来るからってちやほやされて、友達もたくさん出来て楽しかったよね。壊すことしか脳の無い僕なんかどうせ邪魔だったんだろ?」
すぐに。
「だって兄さんは何でも造れる天才なんだから僕のカラダだって本当はすぐにでも造れたはずだよね。そうしなかったのは僕の居ない日常があまりにも平和でだから失いたくなくてわざと手詰まりしてるようなふりして時間かけてさ」
弟は自嘲気味にぽつりとこぼした。
「……清々する。兄さんに必要以上に構って。あんな害悪、死んで当然だよね」
誰のことだか何となく分かった時には。
多分。遅かったと思う。