悪なるアイツを倒すには
……本気、か。
「やめといた方がいいと思うよ」
昼食を食べ終えてそれを片付ける頃には休憩時間も残り十五分を切っていた。
……我ながら時間の使い方がもったいない。
「同感です」
「右に同じく」
何でだよ、と問うまでもなく。
本気のアイツは強い。稽古中の彼が遊び半分だったわけではないが、それでも十分強かった。本気を出すということは彼が最も得意とする、防御をかなぐり捨てて、全ての動きを攻撃に注ぎ仕掛けるということ。
「でも、何でもするんだろ?」
ロイはきらきらと瞳を輝かせながらぐっと拳を握って、
「パシれるってことじゃん!」
「欲が無いですね」
溜め息を吐くリンクと苦笑いしか出てこないマルス。
「……ま、メリットを譲渡してくれるのなら考えます」
「デメリットは?」
そう訊ねるとリンクはふふふ、と笑うだけなのだから分かりやすい。
「ああもう! どうせ代わりに戦うんだったら逆じゃなきゃ意味ねえんだよ!」
「それってありなのかい?」
「持ちかけた本人が何でもありだと公言してますからね」
「だがカービィのことだ。真に負ければ何をしてくるか分からないぞ」
それまで廊下を歩いていた四人は揃って、うーん、と唸った。
「そもそもそんな都合の良い条件で引き受けてくれる人なんているのかい?」
「誰だって彼に仕返しをしたいでしょうからね。滅多に、というか」
「……絶望的だな」
カービィが恨みを買ってなくて、且つカービィ自身に興味がない。
加えて意表を突ける可能性を秘めている、そんな好条件の人物なんて……