悪なるアイツを倒すには
「はいはーい。基礎がなってませーん」
弾かれた剣がくるくると回転しつつ放物線を描いて、地面に突き刺さる。
「はい僕を見て。魔物に見えますか」
その男、持った剣をくるっと回して肩に担ぐ。
「……見えません」
「ですよねぇ。リンクの今の剣使いは魔物の大半には通用するけど腕の利いた剣士相手にはとことん弱い。人に対して抵抗あるのが目に見えて分かる」
はあ、と溜め息を洩らして。
「迷いのある奴が一番面倒くさい。……素振りからやり直し!」
朝、六時。
いつもはこの稽古も五時からなのだが、今回メタナイトが任務により不在ということで代理で師匠を務めるカービィの起床時間に合わせたのである。
カービィとは普段からメタナイト以上に絡んでるし、よく知っている。だからこそ親しみやすくて、今回の稽古だって少しは大目に見てくれるかもしれない。
「あっれぇ? どうしちゃったのかなぁ?」
なんて。そう思っていたのに。
「剣を取ったらそれで終わりとか思ってる?」
カービィは剣の先端でロイの顎をくいと持ち上げて。
「詰めが甘いなぁ。戦場じゃ敵が隠し球を持ってるなんて常識だよ?」
「だ、だからって催涙スプレーはなくね」
ロイは鼻水をズズッと啜って涙目。
「隠し球に良いも悪いもありませーん」
にっこりと笑ったが、程なく。瞳は冷たく色を変えて。
「常識からやり直し」
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