仔カラスの世界
両親というよりは、何だろう。
あの人は、兄弟姉妹でなければ従兄弟や再従兄弟でもない。けれどそれに最も親しく最も等しい、そんな立ち位置。だからこそ手放したくない感情もある。
……彼らはどうだろう。
教えられてからは感情をぶつけ合うことも増えた。互いの刃を交え、噛み付く日もあった。もちろん物理的に。けれどそれも何だかんだ日常で、それまで戦って殺すことしか知らなかった自分たちにとって、ただの兵器とはまた違う、この世界で暮らす極普通の一般人らしい一面だったかのように思える。
それは? それは具体的に、どう言い表すべきだっただろう。
「っはぁー」
程なくして公園に着いた。遊具の付近は子供たちがきゃっきゃとはしゃぎながら追いかけっこをしたり、此方の理解が追いつかないなりきりごっこなんかをして遊んでいる。そこより少し離れた位置にあるベンチに老女とダークファルコは腰掛けて荷物を下ろし、休憩することにした。
……地面に足が届かない。
「坊や」
ぶらぶらと足を揺らしていると。
「はいどうぞ」
目の前に白い饅頭を差し出された。
「疲れたでしょう。これはおばちゃんからのお礼」
目を丸くして見つめていると、
「お饅頭は嫌いだった?」
「い、いえ」
ぱっと受け取ってまた正面に向き直る。ふふ、と笑う声が聞こえたが気にせず封を取って饅頭を見つめ、ぱくり。……口の中で甘味が弾ける。