仔カラスの世界
年齢にして四歳から五歳の幼児といったところか。
どうして、こんなことに。こんな姿だが思考はしっかりしているし記憶だって目覚める以前のものをしっかり引き継いでいる。黒髪、褐色の肌、赤目……間違いなくこれは自分の体だ。自分の体が、幼児化してしまったのだ。
普通に考えて有り得ない。
……どうせなら突っ込んでしまおう。どうして服まで縮小しているんだ。
「あらあら」
頭上に影が差して同時に影。
「可愛いわねぇ」
如何にも優しそうな風貌の老女だった。今しがた服屋での買い物を終えて出てきたのだろう、紙袋を提げている。目を細めて笑いかける老女に、自分は当然のことながらどう答えればいいか分からずにただ見上げていた。
「おいくつ?」
年齢のことを聞かれても。実年齢でさえ回答に困るのに。
「あら、人見知りちゃんかしら」
老女は嫌な顔ひとつせずに微笑を浮かべている。
人見知りだと勘違いをするのなら好都合だ。脈絡もなくぱっと離れて先程の路地へ駆け込む。老女は追ってこなかった。……
「……ぁ、あ」
発声を確認。
「喋れるようですね」
普段のものより声が幾らか高いが仕方ない。
子供だからと理由が付くにしても、中の構造までそうなのか。自分の体に一体何が起こったというのだろう。