大きくなったら
自分ではどうにか出来そうにないし、だからって頼れる人間もいない。昼過ぎまで逃げ回れるかどうかも分からないし……
「ん?」
不意につんつんと肩をつつかれて。
「うっ」
ゲムヲである。思わず声を上げそうになったが、何とか呑み込んだ。彼は、基本的に喋ろうとしないのだから問題ないはず。
「えっと……そ、それじゃあ」
一応、離れておこう。ルーティが立ち上がろうとしたその時、ゲムヲは持っていたスケッチブックに何やら絵を描き始めて。
何となく目を見張っていると。
「え?」
スケッチブックから取り出したのはホイッスルである。終始黙っていたゲムヲだったが、間もなく、大きく息を吸って。
ピーッ!
ホイッスルを吹き鳴らした。