大きくなったら



洗面所に入り、まずは歯磨きをしようと歯ブラシを手に取って顔を上げたその時だった。とてつもない違和感を感じたのだ。

「……え」

鏡。映っているのは確かに自分だが、何かが違う。思わず歯ブラシを落とし、鏡に見入るルーティ。――そんな、まさか。

「ぁ」


背が伸びたんじゃない。成長してるんだ。


声を上げそうになるルーティだったが、急いで自分の口を塞いだ。さっと目を逸らし、もう一度鏡を見つめてみるが、結果は変わらない。……顔立ちが全然違う。

それでも、見慣れてくると何となく嬉しくなってきた。思えば年齢の割に童顔だったし、これなら年相応というか大人っぽい。

「……そっか。大人か」

くすくすと笑うルーティ。皆、どんな顔をするだろうと心が浮き立っていたのだ。

――大変なことになるとは知らずに。
 
 
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