大きくなったら
それは、満月の美しい夜のことだった。
「大きくなる薬?」
ルーティは怪訝そうに見つめて。
「おう」
腕を組んでこくりと頷いたのはスピカである。今日はたまたま、任務の帰りで寄ったらしいのだ。……ピチカに会う為に。
「そもそも、小さくなる薬なんて大きなお友達専用のお楽しみなんだよ」
「自分が小さいって認めるんだ」
拳骨。
「痛い……」
「とにかく、だ」
スピカは懐から小瓶を取り出して。
「何それ」
「うちの部下に作らせた。試しに」
そう言って差し出される前に、ルーティは待ったとばかりに片手を突き出す。
スピカは目を丸くして。
「……何だよ」
「それ、本当に大きくなる薬?」
作ったのはダークルイージだろうが、彼は何度かハプニングを起こしている。
嫌な予感がしたのだ。
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