君が為



訝しげな顔をしていれば指をさすので相変わらず眉を顰めながら振り返れば。

「お、おい」

そこには、ユウの服の裾を握ったまま大粒の涙をぽろぽろと零すリオンの姿が──

「何を泣いている……!」
「りー君ったら捨てられると思ったのよねぇー」
「はぁ……!?」

息子が泣いているのにも関わらずこの母親ときたら片頬に手を当てながら微笑ましそうに話すだけなのだから他に気の利いたことは言えないのかと声を荒げたくなる。

「そんなわけがないだろう……!」

ユウは内心焦りながら体を向き合わせる。

「大体お前普段から結婚だの伴侶だのと浮かれたことを抜かしておいていざ言われたらその反応は何なんだ。冗談だったのか?」
「ちがっ……う……っでも、……ぅう、うっ……ゔー……ゆうぅぅ……!」


駄目そうである。


「ああもう、泣くな。大きいのに……」
「ど……どの部位の話ですか……」
「貴様本当は元気だな?」

打って変わってこれである。

「うぇ……っへへ……へ……」

リオンは頬を抓られながら幸せそうに。

「あいしています……っ」
「その言葉を忘れるなよ。変態」


扉の閉まる音。


「……!」

ノイズの壁を越えて聞こえてきたのは。

「直接言えばいいのに」
「シャイな所も魅力的でしょう……?」

ぽつりと零すイーシスに桜色に染めた両頬を手で包み込みながら恍惚と話すラフィーユ。眉を寄せながら扉を見つめるユウの影で微笑を浮かべつつリオンは小さく応える。

「……はい」


命に換えても幸せにします。……父上殿。


「後継ぎ問題とか大丈夫なもんかね」
「それに関しては問題ないぞイーシス!」

リオンは生き生きとしたように。

「我々ポケモンは発情期の時期になれば雄雌関係なく子を授かることができるのだからな……! というわけで日取はいつにしようか、ユウ!」
「私に言うなッ!」



end.
 
 
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