君が為



──そういうことか。

母親たる彼女の意味深な発言、そして隣に座っているこの男が膝の上で拳を握ってひたすらに表情を沈めているのを照らし合わせてようやく合点がいった。思うに、この男の父親はルカリオの種族特有の心の中を透視する力が強すぎるのだろう。故に別室越しに自分の息子と語らっているわけだ──親子水入らずとは恐れ入る。

ユウは小さく息を吐き出す。そして何の前置きもなく一度伏せた瞼をゆっくりと擡げるとその奥の双眸を金色に瞬かせた。

「!」


その瞬間。

変化は訪れる。


「これは……」

ラフィーユは目を丸くした。

「何のつもりでしょう」
「得意のその目で視てみたらどうだ」
「冗談キツくて草」

その横でイーシスは苦い顔をしながら。

「サイコノイズじゃん。それ使って俺らの能力を強制遮断するとか性格悪スンギ」

リオンは驚いたようにユウを振り返る。

「ユウ……」
「情けない声を出すな」

苛立っているのやらそうでないのやら兎角呆れた様子であることに変わりはなく。

「私は貴様の両親に話を付けに来たんだ。親孝行しろとは言っていない」

腕を組みながら見下げた態度で。

「さっさと引きずり出せ」

ユウが吐き捨てるように言うとラフィーユに視線を受けたイーシスは分かりやすく深々と溜め息を吐き出しながらソファーを下りた。そうして彼が扉へ向かう最中ラフィーユは微笑を湛えながら。

「手短にお願いしますね」
 
 
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