黒染めシークレット
「プレゼントなのです!」
そんな畏まった調子で言われても。
「お、おう。どうも」
とまあこんな返しになる。
「自分なりに真心込めて作りました……」
言いながら恥ずかしげにほんのりと染まった頬を両手で包み、もじもじとしているダークゲムヲを眺めていると何かこう、女の子だなって。
「だったら俺のも食ってくれるよな!? リーダー!」
……おう。
「お前ら暇人だな……」
素直にありがとうと返してやればいいものを。ま、これがいつものことなのだから彼らも気にしない。ダークファルコはニコニコと、ダークロボットはにやにやと、ダークゲムヲに至ってはいやに緊張した様子で凝視している。
「……ん」
そんな最中で三つとも中身を確認してみたが、どれも生チョコ、トリュフ、マフィンと普通のチョコレート菓子である。甘い匂いが漂うが、ふと思い出したのは、
――バレンタインだから。
「どうぞ我々のことなど気になさらず、召し上がってみてください」
「年に一度くらいならこんな手間も悪くないかもなー」
「愛情たっぷりですよリーダー! さあ! さあ!」
「ちちちちょっと待て!」
高まる警戒心に思わず口走った。
「俺が食べたいのは何の変哲もない普通のチョコレートだからな!?」