黒染めシークレット



「プレゼントなのです!」

そんな畏まった調子で言われても。

「お、おう。どうも」

とまあこんな返しになる。

「自分なりに真心込めて作りました……」

言いながら恥ずかしげにほんのりと染まった頬を両手で包み、もじもじとしているダークゲムヲを眺めていると何かこう、女の子だなって。

「だったら俺のも食ってくれるよな!? リーダー!」

……おう。

「お前ら暇人だな……」

素直にありがとうと返してやればいいものを。ま、これがいつものことなのだから彼らも気にしない。ダークファルコはニコニコと、ダークロボットはにやにやと、ダークゲムヲに至ってはいやに緊張した様子で凝視している。

「……ん」

そんな最中で三つとも中身を確認してみたが、どれも生チョコ、トリュフ、マフィンと普通のチョコレート菓子である。甘い匂いが漂うが、ふと思い出したのは、


――バレンタインだから。


「どうぞ我々のことなど気になさらず、召し上がってみてください」
「年に一度くらいならこんな手間も悪くないかもなー」
「愛情たっぷりですよリーダー! さあ! さあ!」
「ちちちちょっと待て!」

高まる警戒心に思わず口走った。

「俺が食べたいのは何の変哲もない普通のチョコレートだからな!?」
 
 
6/15ページ
スキ