黒染めシークレット
人が黙って聞いていればありゃ単なる悪口じゃねえか!
「機嫌よろしくないんですねえ」
スピカは溜め息を吐いた。
「……当たり前だ」
どっちの意味かと問われれば答えに詰まる。
ダークウルフではなく。迎えに現れたのはダークファルコの方だった。やっぱりなとは思いつつも。こうもあからさまに避けられていては気分も落ち込む。
「リーダー」
ちなみにここは亜空間。もう既に基地には辿り着き、ダークファルコが自機を停めている隙に乗っかっていた翼から降りて、操縦士が出てくるのを待っていた頃。
「ん、っと」
呼ばれるのを振り向いたと同時に投げ渡された。……小包。
「今日はバレンタインデーなので」
相手はにこりと笑ったがこれが恐ろしいまでに嬉しくない。
「なんで俺が男から貰わなきゃいけねえんだよ」
「冷たいことを仰いますね。去年は嬉し気にいただいていたではありませんか」
痛いところを突く。
「……ま、ここはひとつ。自分を女だと思って」
「てめえみたいな性悪女が居てたまるか」
そうですかと笑うダークファルコをひと睨みして、歩きながら小包を括るリボンを解いてみたが、はて。上手く誘導されたような気もするが気のせいか。
思っている間に可愛らしい箱が顔を出す。一体どんな顔をして買いに出かけたのかどうかはさておくとして。さほど期待も抱かないまま、四角い蓋を取ってみる。