黒染めシークレット



夜。青い羽根の戦闘用小型航空機から降りる影がひとつ。

「ああぁー……やぁっと終わった……」

どいつもこいつもバレンタインだからって。

溜め息混じりに前髪を掻き上げたのはダークフォックスだった。楽しいことには目がないような彼でも仕事はしっかりこなす。いくらこの日がイベントであろうと、仕事と重なっていては楽しむ余裕すら与えられず。……というのも。

「……覚えてろよファルコ」

弱みを握られた上で二人分の仕事を単独で押し付けられていたのである。

「ったく、……お」

廊下を歩いていたダークフォックスはにやりと笑った。

「珍しいじゃん」

扉を開いて今しがた部屋を退室したのはダークウルフである。そこで良くも悪くも鉢合わせたダークフォックスを目に、ああ成る程と何となく事情を悟って。

「どうしたんだよ。リーダーは?」
「さっき寝たところだ」
「へえ。んじゃああんたも“お疲れ様”ってわけだ」

ダークウルフは視線だけ返して答えない。くく、リーダー無しだとこれだもんな。

「どぉよ。バレンタインの方は」
「お前には関係ない」
「堅いこと抜かすなよ。仕事上がりで暇なんだ」
「風呂にでも入ったらどうだ」

肩を組んで絡んでみたがブレのないこの反応。

「全く面白みのない人ですねえ」
 
 
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