黒染めシークレット
ダークリンクとダークトゥーンは顔を見合わせる。
「僕の作った愛情たっぷりガトーショコラを食べてくれたら教えてあげる……」
ひっ、と短く悲鳴を上げた。
いつの間に後ろに。振り返るとそこにはダークマルスがいたのだ。左手にはガトーショコラを乗せた大皿、右手にはそれをひと口分突き刺したフォークを持って。
「な、なんか垂れてるんだが……」
見れば赤い液体がひと口分のガトーショコラから少量、フォークを伝って垂れている。それを指摘するとダークマルス、舌先で掬い、くすっと笑って。
「ただの苺ジャムに決まってるじゃないか……」
絶対嘘だ。
「嘘だと思うなら、……持ってて。ね、ほら」
じりじりと迫ろうが一向に警戒を解かず一定の距離を保つスピカに、ダークマルスは大皿とフォークをそれぞれダークリンクとダークトゥーンに渡して右腕のアームウォーマーを取り去った。成る程、傷ひとつ無く、変わりない褐色の肌である。
「……ね?」
この愛らしい笑顔には何か裏が有りそうなものなのだが……
「くふっそれで正解だよ、リーダー……」
「ぎゃああぁあ!?」
今度こそ声を上げた。
どうしてうちの連中はこうも背後を取りたがるんだ! いや、そのお陰で実戦では敵に背後を取られることもそうないが、じゃなくて突っ込むべきは、どうしてこのダークミュウツーが顔や腕に赤の滲んだ包帯をしつこく巻いているのか。
……ん?
「だって僕、傷付けるのは好きでも傷付けられるのは嫌いだから……」
やっぱりか!
「リーダーの為だからと脅すように向けられた刃……ゾクゾクしたねぇ……」
「お望みならもう少し深く、今度は抉ってミートパイにしようか……」
「うはぁ、素敵」
「お前ら結婚しろ」