黒染めシークレット
「……どうしたんだよ、それ」
向かいの狼がぎくりと肩を跳ねた。
「怪我したのか?」
「あ、ああ、えぇとこれはその」
元々奴も遠慮をする性分だ。今回だって心配だけはさせまいとこうして見つかってしまう最後の最後まで無かったものとしてだんまりを決め込んでいたのだろう。
その気持ちは分かる。とはいえ部隊隊長として、隊員側のあれそれが全く分からずじまいというのもどうかと思うんだ。よって原因解明に踏み出すことにした。
「いいから言え。どうしたんだ、それ」
それだというのに狼は隠すようにその手を引っ込めて。……
「えっ、避けられてる?」
――とある正午のエックス邸。
「あまり大きな声を出すな」
スピカはルーティの肩を組んで囁いた。
「……気にしてんだよ、こっちは」
いよいよ嫌われてしまったのか。想像もしていなかった。
――放っといてください!
「嫌われちゃったんじゃないのー?」
地獄耳め。ひそひそと話していたにも関わらず声を拾い、にやにやといやらしいような憎たらしいような(後者八割)笑みを浮かべてしかも後ろから近付いてきたのはカービィだった。すかさずきっと睨みつけるが、
「あんた性格キツいもんねえ」
「お前が言うなッ!」
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