子供じゃないもん!
ど、どうしよう。
「はーい視線こっち向けてー」
成り行きでこんな所まで来ちゃったけど。
「……もう少しだけ肩の力抜いてもらえるかな? えーと、」
「ピチカ、ですっ」
緊張しちゃうよおおおっ!
「うん、じゃあピチカちゃん!」
三脚台の上に一眼レフカメラを構えて。
「その変わった、じゃなかった可愛い名前に負けない可愛さで!」
「はっはい!」
お兄さんの笑顔がカメラのフラッシュと同じくらい眩しい。直視不可。
一応、指摘されたからには目線を合わせるも、緊張。素人全開。ちなみにここは、とある雑誌を扱っている事務所の一室、いわゆる『撮影スタジオ』らしい。
車に乗せられるのであれば疑って断るつもりであったが、歩いて五分とかからないということであっさりついて来てしまった。自分は押しに弱い気がする。
「いいよいいよー」
がちがちに緊張してるのに、お兄さんはそれらしいプレッシャーを一切与えない。
「もう一枚!」
きっと物凄いプロの人なんだろうなあ……
「うん、いいねえ。サイコーだよピチカちゃん」
「あっありがとうございます」
二十代後半くらいかな。無精髭とベレー帽が似合ってて素敵な……
「おい」
もちろん、このスタジオにはそのカメラマン以外の男、すなわち関係者もいる。
「おふざけはその辺にして」
その小太りの男は顰めた顔で告げた。
「さっさと始めないか」