子供じゃないもん!
誰かに見つかってしまわないよう、細心の注意を払って。
だって、もしもにぃにに見つかったら写真とか撮られて散々褒めそやされた挙げ句お出掛けの時間なんか無くなっちゃって結局ただのコスプレでしたーなんてことになり兼ねないんだもん。容易に想像ついちゃうよ。
「……そうだ」
街へ向かって歩きながら考えついたのは行き先だった。
目的もなくふらふら、あっち行ったりこっち行ったりで歩いてるのは迷子みたいでそれこそ子供っぽいんだもん。
「そろそろ新刊が出てる頃だけど……」
独り言が示す、ピチカの行き先は本屋。
しかし、彼女は気付かなかった。その無防備な後ろ姿を見つめる影の存在に――
「……なあ。あの子可愛くない?」
「うわマジ可愛い」
「な?」
潜めて話す声が肝心のピチカの耳に届くはずもなく。
「彼氏いんのかな……」
やっぱり声かけられないなぁ。
内心がっかりとしていた。これを機に大人の恋が始まっちゃったりして! なんて胸を弾ませたが期待はずれ……ちょっと。弾む胸なんかない癖に、とか呟いたのは何処の誰? そこまで大人の対応は出来ないんだけど。
……さすがに胸は、関係ないよね?
「すみませーん」
ショーウィンドウに反射してうっすら映り込む自分をじっと見つめていたその時。
「もしもーし」
「わっ、え、ぼくっ、じゃなかった……私、ですか!?」