子供じゃないもん!
こんこん、と叩いて鳴らすと、扉は数秒と経たない内に開かれた。
「……あれ」
その目的の人物は目を丸くする。
「珍しいじゃん。どうし、」
「僕を大人にしてくださいっ!」
語弊を招くであろうピチカの叫びは、やけに響き渡って木霊した。
「ああ、そういう意味」
ギシッとベッドを軋ませて縁に足を下ろす、男の名はカービィ。
「おかしいと思った」
ドキドキと心臓が鳴り止まない。
ピチカは真っ赤になった顔を隠すようにして背けながら、落ち着け落ち着けと胸に手を置いて念じた。まさか、理由を聞くよりも先に腕を引かれて、その上ベッドに押し倒されちゃうなんて思ってもみなかったんだもん。
男は狼なのよ、気をつけなさいって。本当、歌の通りなんだから。
「それで?」
でも、少女漫画みたいな展開で悪くなかったような……ドキドキしたし……
「イコールで結びつかないんだけど」
カービィって案外悪い顔というか、それもかっこいいなって、
「……あのさ」
「うわっ、きゃー!? きゃー!?」
「ああもううるさっ、赤外線センサーか何かでも張ってんの?」
先程の光景が頭から離れない内に接近してみれば、これだ。
また何かされるのではと警戒して悲鳴を上げるピチカにカービィはもちろんのことさっと身を引いて距離を置く。座り直して、
「だからさ。大人になりたいってのは分かったけど、僕にプロデュースセンスとか期待されたところで理想を忠実に再現できる可能性が高いとも言えないし」