子供じゃないもん!



「いいんじゃねえの」

少しの間を置いてスピカは返した。

「子供でいいじゃん」

ピチカは顔を上げた。

「あー、気持ちは分かる。子供の癖にってひと括りにして突き放されたりさ」

説明に迷って頬を人差し指で掻きつつ。

「……でも、大人になると逆。何も出来なくなる」

クリスマスになればサンタさんからのプレゼント。年が明ければ、お年玉。

一年を通して毎日が楽しかった。今がそうじゃないことはないけれど、子供の時はそれこそ日が暮れて、叱られるまで遊び尽くして。


だから今は痛いほど刺さる。

もう戻れない日常に依存していたことに。戻りたいと、叫ぶ瞬間があることを。


「いいから甘えてろって」

ぽんと乗せられた手が乱雑に頭を撫でた。

「我儘言って大人困らせて、そんでもって無邪気に笑って遊んでろ」

ピチカはくすぐったそうに目を閉じて、そっと開く。

「……寂しいだろ」


子供は贅沢だ。

そして、幸せな生き物だ。


「……うん」

いつか返せますように。

「じゃあ僕が本当の大人になったら、にぃにのこと、甘えせてあげるねっ」
「なんでそうなるんだよ」
「んーとね。……」

例えば。

「ただの恩返しだよっ」


大好きなこの人に。



end.
 
 
14/14ページ
スキ