子供じゃないもん!
「いいんじゃねえの」
少しの間を置いてスピカは返した。
「子供でいいじゃん」
ピチカは顔を上げた。
「あー、気持ちは分かる。子供の癖にってひと括りにして突き放されたりさ」
説明に迷って頬を人差し指で掻きつつ。
「……でも、大人になると逆。何も出来なくなる」
クリスマスになればサンタさんからのプレゼント。年が明ければ、お年玉。
一年を通して毎日が楽しかった。今がそうじゃないことはないけれど、子供の時はそれこそ日が暮れて、叱られるまで遊び尽くして。
だから今は痛いほど刺さる。
もう戻れない日常に依存していたことに。戻りたいと、叫ぶ瞬間があることを。
「いいから甘えてろって」
ぽんと乗せられた手が乱雑に頭を撫でた。
「我儘言って大人困らせて、そんでもって無邪気に笑って遊んでろ」
ピチカはくすぐったそうに目を閉じて、そっと開く。
「……寂しいだろ」
子供は贅沢だ。
そして、幸せな生き物だ。
「……うん」
いつか返せますように。
「じゃあ僕が本当の大人になったら、にぃにのこと、甘えせてあげるねっ」
「なんでそうなるんだよ」
「んーとね。……」
例えば。
「ただの恩返しだよっ」
大好きなこの人に。
end.
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