子供じゃないもん!
ピチカが泣き止んで落ち着いた頃、警察はやって来た。
倒れた男たちが無理矢理引っ張り起こされて連れ出されていく最中、スピカはただ黙って腕を組み、ピチカの隣で事が片付けられていくのをじっと見守っていて。
「その服、買ったのか」
不意に開いた口がそう問いかけた。
「カービィに貸してもらったの」
答えると、そっか、とだけ返してまた沈黙。
「どうだった?」
次の質問にピチカはカーディガンの持ち出しをそっと寄せた。
「……お姫さまみたいだった」
メイクして、髪も綺麗に整えて。素敵な洋服で着飾って、それがほんの僅かでも視線を何となく感じていた。男の人にだって声を……あれは嘘だったけど。
ううん。まるで魔法にかけられたかのようだった。
「でも解けちゃった」
半笑い気味にピチカは言う。
「僕ってば子供だよね。にぃにの言う通り、簡単に嵌められちゃって」
自分が情けない。でも考えれば考えるほど泣きそうになる。
馬鹿だったのは僕だから。身に染みて分かってる、だから悔しくて。
「っ……」
下唇を静かに噛み締めて押し殺す。
大人になりたいなんて、ただの我儘だ――