子供じゃないもん!



乱雑に外側に向かって跳ねた金色の髪が、ふわりと揺れる。

鋭く刺さる冷たい瞳は。つんとしたその目つきは。

「……あぁ?」

対して小柄で華奢な体つきに、男は小馬鹿にした態度でガンを飛ばす。

「ここはテメーみてえな餓鬼が」

言葉が途切れた。

「……何か、言ったか?」

その青年と男の距離はおおよそ、零。男の目前まで目にも留まらぬ速さで接近した青年は彼が言い切るよりも早く顔の側面に向かって蹴りによる重い一撃をお見舞いしたのだ。当然のことながら躱す間もなく、ビデオカメラと共に薙ぎ倒される。

「っ……の」

ピチカに刃を向けて脅しをかけていた男がそう声を洩らし、動いた。

「おおおおっ!」

声を上げてナイフを手に青年の元へ駆け出す。距離が十分に縮まったところで背を向けていた青年はようやく視線を向ける。氷のように、冷えきった瞳を。

「な、」

男のナイフは空を切った。

到達するよりも早く青年は強く地面を蹴って後転しつつ高く、高く飛び上がり――

「ッか、ぁ」

とんと天井を蹴り出して急降下、くるんと前転をかけて踵落とし。

他の男たちはただ見守るしか術がない。何かをするよりも何かを考えるよりもあの青年の方がずっと速くて。

「ひっ」

……追いつけない。


追いつける、はずがない――
 
 
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