大好きな君へ



フォックスは受け取った数本の白い薔薇の花束を手に、暫し言葉を失っていた。

「って、ちょっと臭すぎ」
「ルゥゥティィィイッ!」

かと思えば、これである。

「うわあっ!?」

勢いよく飛び付かれ、その場に尻餅を付くルーティ。フォックスはというと……感動したのかぼろぼろと涙を溢している。

「絶対……絶対に嫁に出すもんかぁぁ!」
「僕、男なんだけど」

泣きながら力強く抱き締めるフォックスに、ルーティは小さく溜め息を吐き出す。

「ったく。みっともねえからやめろ」

見兼ねたファルコがフォックスを引き離し、ルーティは鼻水ずるずる状態の酷い顔をしたフォックスを目に、吹き出す。

「あははっ! 変な顔っ……」
「え?」
「言えてるな。おらよ、ハンカチ」
「ん……」
「鼻はかむなよ」

そんなくだらないやり取りに背を向けてウルフは煙草を取り出し、火を点けようとしたその時、柔らかな風が吹き抜けたのだ。


――ルーティを、頼んだよ。


そんな声が聞こえた気がして、ウルフは空に目を向ける。青く晴れ渡った空が何処までも続いていて、もう一度、風が吹いた。

「……おう」


大好きな、君へと贈る。

――尊敬と、永久に続く純潔な愛を。



end.
 
 
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