大好きな君へ



「案外目の前にいたりしてな」

せっかくの雰囲気をぶち壊すように口を開いたのはウルフである。ルーティは思わず肩を跳ねさせたが、振り向いて。

「もう。脅かさないでよ」


長く居座ることもなく、ルーティは立ち上がった。振り向いた彼の手には、予備の透明な包装紙で包んだ数本の白い薔薇。

「はい、フォックス」

それを差し出すのだから驚きである。

「これ、俺の父さんに?」
「ううん」

ルーティは首を横に振って、

「フォックスにだよ」

これにはさすがのフォックスもファルコと顔を見合わせた。ルーティは続ける。

「いつも、お父さんみたいに接してくれるから……だからそれ、お礼なんだ」

そして、肩を竦めて笑うのだ。

「ありがとう、フォックス」
 
 
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