大好きな君へ
「今日って……」
ルーティは振り向く。
「うん。父の日」
正装。白い薔薇の花束。
向日葵の咲いていない薄茶色の地面に沿って、真ん中にぽつんと置かれた墓石へ向かうルーティを目に、改めて理解する。
――だから、ウルフも連れてきたんだな。
「でも、ルーティ」
墓石の前に跪いて花束を添えようとするルーティに、フォックスは声をかける。
「父の日って黄色のイメージが……」
ルーティは、ぴたりとその手を止めた。
「……ここってさ」
フォックスはルーティの背中を見つめる。
「向日葵、沢山あるでしょ。だから、黄色い花じゃ天国から見えないかなって」
ふふ、と小さく笑みを溢すルーティに、フォックスは静かに視線を落とした。
ラディス。やっぱり、お前の子供は……
「黄色の中に白。これなら少しは目立つかな。ちゃんと、気付いてくれるよね」
誰よりも優しい子になってくれた――