はじめまして、自覚症状
ぶわっ。……ぶわ?
「『ストレンジガール』もお勧めで御座るー」
ぱっと棚を振り返って立ち上がろうとすれば。
「ひょ」
腕を掴まれて──引き寄せられて。
「ミカゲ」
耳元。
「どうして逃げるんだ」
「……いや」
成り行きで付き合っただけの相手だし。
「恥ずかしいのか?」
少し声質に恵まれたからって。
「全然。……別に」
顔が良いからって。
「ミカゲ」
一度気を許したからって。
「こっちを向いて」
二度までも。
「、……」
重ねられた唇から解放を許されればミカゲは即座にジョーカーの肩口に額を押し付けた。いやいやいやいや顔が熱い。ああもう駄目だ自分で自分を誤魔化しきれないほどに。
完全に理解した。してしまった。
惚れてる。
自分はこのひとに惹かれてる。
「どんな反応をするかなと思ってた。急に部屋に行きたいなんて言ったら」
ジョーカーはミカゲの頭を撫でながら。
「もっと自然体で普段通りの振る舞いをしてくるものだと思ってたから」
ああもう。
「思っていた以上ですごく嬉しい」