こっち向いて男子!



ふふ、楽しんでるみたいね。

「どうしたのかしら」

料理やドリンクを配り終えて、食堂の端、壁にこっそり背中を預けながらお盆を手にひと息。賑やかな光景を前に笑みをこぼしていたところ、そんなピーチに声をかけてきたのはシフォンである。そのエプロンには何故か赤い液体が付着していたが、グラマラスな体型で尚且つ彼女のことだ。一体何をしたのやら。

「休憩中よ。どう? 楽しめてる?」
「それはこっちの台詞だわ」

そう返されたピーチはきょとんとして。

「……浮かない顔してる」

え、と自分の頬に思わず触れた。全くそんなつもりはなかったのだ。

「何かあった、というよりは何もなくて、かしら」

一瞬、ピーチはその言葉の意味を理解できなかったが。

「……気のせいよ」

そう言って賑やかな光景の中へ戻るピーチを、シフォンはじっと見つめていた。


「きゃっ」

スカートがふわりと不自然な風に揺れれば、ばっと反射的に押さえてリムは振り返った。その犯人は腕を組み、椅子に腰を下ろしてじっと見つめている。

「……訴えるわよ」

リムはユウに鋭い視線を返す。

「携帯を貸せ」
「なんで?」
「電話がしたい」
「自分のを使いなさいよ」
「修理に出している」

普段どんな使い方してるのよ、とリムは溜め息。

「……はい。終わったらすぐに返しなさいよね」
 
 
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