こっち向いて男子!
「兄ちゃん!」
ぴしゃりと叱るように呼ばれれば、ドンキーは肩を跳ねさせた。
見れば、同席していたトゥーンとディディーが一緒になって睨んでいる。「あーはいはい」とだけ返して頬杖。……紳士やんなぁ。
「お、お待たせいたしましたー……」
三人はぱっと振り返る。
「ご注文のツインドリルパスタと血みどろドクロオムライスでーす……」
それぞれの料理を両手に抱えて、現れたのはピチカである。やはりこの格好は恥ずかしいのだろう、頬を染めて喋り方も仕草も何処となくぎこちない。
トゥーンとディディーは案の定見惚れていた。好きな女の子がこんな可愛い格好しとったら誰かてそうなるわ。ドンキーは吹き出しそうになるのをぐっと堪えて、ここは暫く彼らの微笑ましいやり取りを眺めることにする。
「おおっ俺、パスタ! ディディー、オムライス!」
「そ、そうです」
挙動不審か。落ち着いたれ。
「……ふ、あははっ。変なの……」
しかしこれが却ってピチカを安心させたらしい。くすくすと笑って、それぞれの料理を置いていく。ツインドリルパスタ、なんてよう考えたな。せやけどこの血みどろドクロオムライスってなんや。見た目からえぐいわ。
「メイドさんのサービスはいかがなさいますか?」
料理を見つめていたトゥーンとディディーは怪訝そうに顔を上げて。
「……サービス?」
「えっとね、例えば料理のひと口目を“あーん”してあげるとか」
悪気はないのだ。ピチカはかくんと首を傾げて。
「……嫌?」