こっち向いて男子!
「……やーめた」
その発言に次はマリオが目を丸くした。
「なぁんか萎えちゃった」
「は、」
「その態度は嬉しいの残念なのどっちなの」
ピーチはふう、と息を吐き出して。
「……聞いたことないわよ、前代未聞。お姫様に手を上げるなんて」
「それはお前が悪いんだろ」
「あくまで責任を私に押し付けるつもりね。娯楽は大事よ」
でも、と続けてピーチは微笑。
「これでちゃらにしといてあげる」
――ただの気まぐれなんだから。
「女子ー。さっさと退散するわよー」
マリオはぽかんとしていた。
食堂を出ていくピーチを視線で追うことなく、ただ暫くは何が起こったのか分からずに。ハリセンを持っていない、反対の手を恐る恐る口に添えて。
「みーちゃった、みーちゃった」
ひょいと顔を覗き込んだカービィに肩が跳ねる。
「口直し、したげよっか?」
ぼっと炎が燃え上がるが如く。マリオは耳まで赤くして、
「結構!」
乙女心は複雑なのよ。――ヒゲ面のおう、……おばかさん。
「戻ったようだな」
食堂に遅れて入ってきたのはルイージである。
「あ、うん」
「どうかしたのか」
ルイージは暫く開いたままの扉を見つめていたが、首を横に振って。
「……何でもないよ」
何かいいことでもあったのかな。ピーチ。
「それより。兄さんに電話したのユウでしょ」
「……さあな」
「大変だったんだからね? 急いで任務片付けた兄さんが……」
聞く耳持たず。ふん、と興味なさげに、ユウは遠目にマリオを見つめた。
end.
13/13ページ