こっち向いて男子!
「阿呆かっ!」
続けた怒鳴り声に、ピーチは肩を跳ねさせた。
「ど、怒鳴らないでよ!」
「怒鳴るわ!」
「大体なんで私を叩くのよ!」
「当たり前だろうが!」
さすがヒゲ面ね、この頃になると判断能力も鈍っちゃうのかしら――なんて茶化す間もなく、マリオは続けて声を上げる。
「男相手にこんなことして、馬鹿かお前!」
今度もピーチは目を丸くして見つめた。
「男がふざけてやる分には然程問題はない、だが女がやるのは別だ。男は馬鹿だからすぐその気になる。お前たちが思ってる以上に危険だし、下手したらっ」
マリオはハリセンの持ち手をぐっと握り締めて、呟く。
「……襲われてたかも、しれないんだぞ……!」
服、ぼろぼろ。汗もあんなにかいてる。
「態度で優位に立ったところで、力は男の方が強いんだぞ分かってるのか!」
馬鹿みたい。
「……怒ってるの?」
「今まで何だと思ってたんだよ!」
ぜえ、はあと息を弾ませるマリオをピーチは暫く見つめていた。
打たれた頭は、まだ痛いけど。不思議と苛立ちはなかった。何だか、頭の中の悪い部分をはたき落とされたみたいで。