こっち向いて男子!



おおっと湧き上がる男子の歓声、留めようとする声は女子のものか。

ピーチはふんと密かに鼻で嘲笑った。


――どうだっていいじゃない。こんなこと。


だん、と食堂の扉が勢いよく開かれたのはその直後だった。はあ、はあと息を弾ませる赤シャツに青のオーバーオールの男。ピーチは目を丸くして呟いた。

「マリオ……?」

え、だって今朝任務に出かけて、二日はかかるはずだったんじゃ。

突然の登場に誰もが沈黙して食堂内はさっきまでの賑わいが嘘かのように静寂に満ちていた。マリオはそれまで触れていた扉から手を離すと、顔を上げて。

「……えーっと。飛び入り参加、」

すかさず睨みを利かされて。

「じゃあなさそうですね」

ごめんなさーい、と苦笑気味に、それでいてフェードアウト。

マリオはあまり呼吸も整わない内に扉から離れると、懐に手を突っ込みながら進み出た。早足で歩きながら、取り出したのは彼がいつも愛用しているハリセン。

それを一度、ぶんと薙ぎ払って対象者を鋭く睨みつける。

次第に距離は縮まり、そして。


――ぱんっ、と乾いた音が静寂した空間の中でいやに響いた。


「……え?」

思わず、そんな声も洩れる。

突っ込みの対象は。……どうして。


どうして、私が叩かれなきゃいけないのよ――?
 
 
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