春先の温もりは



見つからないように細心の注意を払いながら部屋に戻ってみると、ルーティは布団に包まり、ぐったりと寝込んでいて。

熱、上がってねえだろうな。

「寝るなら仰向けで寝ろ」

そう言いながら桶を床に下ろし、縁に掛けておいたタオルケットを水に浸し、絞る。

言い付け通りに仰向けになり、布団を握って喘ぐルーティの額に、長方形に畳んだタオルケットを横向きに乗せてやる。

「ん……っは、冷たい……」

ぬるま湯の方がよかったか。

なんて心配も余計だったようで、ルーティは目を細めて静かに笑った。傍らで優しく髪を撫でてやり、時計を見て囁く。

「寝てな。粥でも作ってやる」

こくりと頷いたルーティだったが、離れようとしたが刹那、弱々しく服の裾を掴んで引き止めた。立ち止まり、振り返ると。

「……――」

にこりと笑う、彼。間もなく耳に届いた小さな声に、自分は目を開いた。
 
 
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