春先の温もりは



「その水、何に使うのかしら」


ギクッ


蛇口を捻って水を止め、考えた。

本当のことを言えば、ならば自分が看病するのだと騒がれ、パートナーの管理が出来ていないのだと毒突かれ、挙げ句、お前が看病かと笑われる。そうに決まっている。

だからといって嘘を吐いても彼ら、中でもシフォンは勘が鋭い。うっかりバレてしまえば、下心があるのではと疑われる。

「関係ねえだろ」

とか何とか色々と思考を巡らせながらも、結局はいつものようにぶっきらぼうに返すのが一番なのではという結論に辿り着く。

「そうね。私には関係のないことだわ」

シフォンも何を疑うこともなく、シャワーノズルを手にすると何故か水を出し、何の合図もなくネロの頭にぶっかけて。

「ぎゃああっ! 水ぅぅ!?」
「あら本当。水の話をしていたから」

わざとだ。絶対にわざとだ。
 
 
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