言葉がなくても
ここは、レイアーゼ繁華街。
メタナイトからの許しを貰ったアイクは私服に着替え、同じく私服に着替えたゲムヲと共に文房具屋を目指していた。
「わんっ! わんっ!」
散歩途中の小型犬に吠えられ、アイクの後ろに隠れるゲムヲ。飼い主は「すいません」と笑い、犬のリードを引っ張って。
犬はそれだけで反省したのかおとなしくなったが、ゲムヲはアイクの後ろから出てくると、自ら犬の元へ駆け寄って。
「あら。マロンが尻尾振るなんて」
人見知りする犬なのだろうか。
屈み込んで優しく頭を撫でるゲムヲに、犬は嬉しそうに尻尾を振りながら擦り寄っている。飼い主の女性は小さく笑みを溢して、突っ立っているアイクに目を向けて。
「息子さん、ですか?」
おいおい。自分が父親に見えるのか。
否定しようか否か迷ったが、否定したところで本来の関係の説明も面倒臭い。
「……そんなところだ」