言葉がなくても
「言えないことなのかい?」
「こいつ気まぐれだからなぁ」
違うんだってば。
ゲムヲはむすっとした顔になり、ぱしぱしと痛くない程度にロイの背中を叩く。
「いたたっ、何だよ!」
「ロイ。何か恨まれるようなことした?」
訊ねるマルスに、ロイは当然覚えが無いので首を横に振る。彼が何を伝えたいのか分からず、リンクが腕を組んでいると。
「会話の手段が断たれたのではないか」
口を挟んできたのはアイクである。
ぱあっと表情を明るくしたゲムヲ、勢いよく頷いて立ち上がりアイクの元へ駆け寄っては、後ろに回り込んで服の裾を掴む。
「それは確かに、困りますよね」
リンクは引き続き、腕を組みつつ考える。
ゲムヲが伝えたいことに真っ先に気付いたのは彼だ。買い物に行かせてやりたいが、喋らない彼だけではさすがに不安だし。
「アイク。何だったら彼と一緒に、買い物に行ってあげたらどうでしょう」