言葉がなくても
ペンも、インクが切れたのか掠れている。
「っ、わ」
するとスケッチブックとペンをその場に置いて立ち上がったゲムヲ、突然駆け出して。彼が目指す先にいたのは――
「うおぅ!?」
稽古途中の剣士組。
後ろから急に腰に抱き付かれたロイ、不意討ちすぎて仰向けに倒れてしまい。
「な、何だよいきなり……」
「受け身くらい取れんのか馬鹿者」
一旦稽古を中断、その場に剣を突き立ててはロイを見下ろすメタナイト。
「いやそこは心配してよ」
「よそ見をしているからですよ」
ロイは腕を立てて上体を起こすと、その場に座ったまま振り向いて。抱き付いたままのゲムヲと視線を合わせるように膝に手を当てて屈み、リンクは問いかける。
「どうかしましたか?」
しかし、ゲムヲは黙っている。というよりはスケッチブックもペンも無くなってしまったので、会話することが出来ないのだ。