とある男子の恋愛事情
「ぶっ殺す!」
否定する間もなかった。
ダークウルフが本気で拳銃を構えるものだから、ディディーとトゥーンは慌てて背を向けると我先にと逃げ出した。直後、幾つもの発砲音がエックス邸に響き渡って。
「リーダーの貞操は絶対に渡さん!」
銃を乱射しながら追いかけるダークウルフと、逃げ惑うディディーとトゥーン。
「つかっ、俺達正統派男子だからああ!」
「男に興味なんかあるかああっ!」
どんなに訴えたところで意味はなくて。
「問答無用! 待ちやがれ!」
「不公平だああっ!」
――ごめん、ピチカ。
俺達の内のどちらかが本当の想いを打ち明けるのは、まだまだ先になりそうっす。
「……ねえ、スピカ」
三人が見えなくなったところで。
「何だよ」
「二人が好きなのって、スピカじゃなくてピチカだったと思うんだけど……」
ルーティがこっそり。
「だよな。おかしいと思った」
「あれ、怒らないの?」
「ピチカは可愛いからモテるに決まってんだろ。好きだってなら別に構わねえよ」
感心したのも束の間、
「ただし、付き合おうとした奴からぶっ潰すけどな」
――ピチカ。君は婚期が遅れそうだね。
影の差した黒い笑みを浮かべるスピカを目に、ルーティは苦笑し、溜め息を吐いた。
end.
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