偽物じゃなくて



「嘘なんかついてねえよ」

スピカは眉を顰めて。

「真っ正面から本気で付き合ってやってんだ。笑ったり、泣いたり、怒ったり」

ぐいと引き寄せ、

「全部」

鋭い瞳で睨み付ける。

こんな目をしていても彼が今、どんな気持ちなのか手に取るように分かって。


それが、辛かった。


「俺もお前も、家族なんだよ。本物の」

優しくて愛しい、俺達のリーダー。

「偽物じゃねえんだよ」

本当の気持ちを伝えるとしたら。

「俺が嘘を吐くような奴に」


リーダー、俺は。


「み、っ」

今度は自ら口付けを交わす。

舌を忍ばせようとしたら引き離されたものの、彼は予想通り、頬を赤く染め上げた。

「好きです」
「なっ」

“ありがとう”という言葉も捨てがたいけど、今はもっと先に伝えたかった言葉を。

「何、言って」
「本当のことを言っただけです」
「かっからかうな!」
「いいえ」

ダークウルフは笑って。

「嘘なんかじゃありませんよ」


それが例え、偽物だったとしても。

いつか本物になる日まで。


「でもリーダー、身長は嘘ついて」
「死ね!」



end.
 
 
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