偽物じゃなくて



「言いたいことは、それだけか?」

その台詞に、ダークウルフは目を瞑る。

足音。近付いてくる。ぐいと胸ぐらを掴まれて、殴られるか蹴られるか、覚悟した。


「っ……!」


目を見開く。

そこには背伸びをした彼が、自分の唇と唇を重ねていた。突然の出来事に、ダークウルフの心臓は大きく跳ね上がって。

「……ざけんなよ」

唇を離しつつ、スピカはぽつり。

「ふざけんなよ。毎回毎回早起きして、起こさねえ癖にじろじろ見やがって」

それって。

「リーダー……気付いて、たんですか」
「動体視力嘗めんな!」

回し蹴り、炸裂。

関係があったのかどうかは突っ込まないとして、ダークウルフは数メートル先まで吹っ飛ばされ、仰向けになって倒れた。

起き上がろうとした時、腰に跨がったスピカが胸ぐらを掴み、無理矢理起こして。
 
 
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