偽物じゃなくて



「……あの」

ふと足を止めて、声をかける。

ダークウルフより斜め前を歩いていたスピカは振り返り、怪訝そうに見つめて。

「何で、俺達を選んでくれたんですか」

あれから一週間だ。そんなのは今更訊ねるようなことでもない。だが、ダークウルフの中でマイナスな思考が渦を巻いていた。


――同情。


「俺達が家族みたい、なんて」

ダークウルフは顔を俯かせて。

「本当は、嘘だったんじゃないですか」

そう言い放った後で、後悔した。

スピカの表情には影が差していて、ダークウルフははっと息を呑んだ。自分は彼を突き放して、どうしたいというのだろう。

これが、自分が本当に言いたかったこと?

心臓の高鳴りだって今はほら、落ち着いてる。なのに、胸が苦しくて締め付けられるようで……顔を見るのさえ、辛い。
 
 
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