偽物じゃなくて
その時、ダークウルフの食事が全然進んでいないことに気付いたスピカは、目を丸くして。歩み寄り、顔を覗き込みながら。
「具合、悪いのか?」
「ぁ」
――どくん。
「ち、がいます」
「ふぅん」
顔を合わせないよう視線を落としながら答えると、スピカは興味無さそうに声を洩らして台所へ。朝食を取りに行ったらしい。
「……っ」
恋煩い、か。
さっきまで静かだったのに、今はもう五月蝿い。最初と同様、胸に手を置いて目を細める。はあ、と短く息を吐き出して。
「……見た?」
「ああ。ありゃ確定だな」
ダークフォックスとダークリンクはそんなダークウルフを目に、ひそひそ。
「恋煩い」
ぽつり、声を揃えた。
結局朝食はまともに喉を通らなくて、スピカが朝食を終えたのを確認して朝食を下げ、一緒に食堂を出ることにした。
だからといって、特に話す話題もなく。