恋愛ナルシスト
ガチャ、とノブを捻る音。
それまで扉に軽く背を預けるような形でいたパックマンは急ぎ離れた。素早く目を配って資料を仕舞っている棚の影に飛び込む。扉が開いたのはその直後だった。
「そこにいるのか」
いないよ、と答えようとして口を噤んだ。
答えたら駄目だ。
「何を隠れているんだ」
ロックマンの目はサーモグラフィーの機能も搭載されている。隠れたところで無駄なのは分かっていた。小さく息をつく声。靴音。
「来るなっ」
ゆっくりと吸い込んだ息を吐き出すのと同時。足音は止んだ。
けれど直ぐ様再開され見つけられた腕を掴まれたのと同時反射的に振り返る。
「……泣いていたのか?」
問いかける声にパックマンは腕を払った。
「何だよ」
苛立ちを殺して返す。
「……さっきの報告書」
「ああ、あれ。悪かったね紙飛行機になんかしちゃってさ」
「そうじゃない」
ロックマンは払われた手を腰に添えた。
「……凄いじゃないか。少し骨の折れる仕事だと思っていたからな」