恋愛ナルシスト
次の日。
「楽勝楽勝っと」
憂さ晴らしに熟してきた任務が比較的良評価で上機嫌。そんなものである。
依頼達成のサインが記された報告書をひらひらと扇ぎながら、パックマンは廊下を歩いていた。向かう先はロックマンの部屋。完了報告をする為である。
「――いつもすまないな」
部屋の扉の前まで来てドアノブに触れようとしたその時だった。
「このくらい、お安い御用だよ」
……先客のようだ。
扉は完全に閉まっていたわけではない。隙間をそろりと覗くと見覚えのある後ろ姿が窺えた。聞こえてきた声からしてあれはマークのようだ。
「あの地方の訛りは逆評判だからね。僕も得意じゃないんだけど……」
「そちらの評判は上々のようだな」
ああ、成る程。あっちもあっちでお仕事の報告か。
マークは仕事が早く、誰より優れたその頭でそつなくこなす。翻訳は妹のルフレの方が得意だろうが兄もその限りではない。恐らくのこと、ロックマンは得意でなかったもので今回マークに仕事を預けたのだろう。パックマンは報告書を見つめた。
「じゃあ、僕は部屋に」
言いかけて視界の端を何かがふわりと抜けた。マークは振り返る。
「ん」
それは厚みのある椅子に腰掛けていたロックマンのちょうど足下で力尽きた。
……紙飛行機。拾い上げて、紙を広げてみる。
「どうかしたのかい?」
「……いや」
ロックマンは立ち上がった。