ブラックチョコレート
大体、こういうのは教えてもらってる内に、好意を抱く展開があるものだが。
「面白いですねぇ。沸騰した水の中にチョコレートをぶち込みますか」
失敗してからここはこうするのだと教えるのだから、悪意しか感じない。
「間違いを素直に指摘しろ!」
「ええ。間違ってますよ」
「直前に言え!」
クレイジーは酷く苛立ちを感じながら、それでもマスターにチョコレートを贈る為だと諦め、鍋を流し台の上へ移す。
「……買った方が相手の為では?」
ダークファルコはその後ろ姿を見つめながら、腕を組んで。クレイジーはぎこちなく洗っていた手を止めて、ぽつりと。
「駄目なんだよ。それじゃ」
――密かな想いがあった。
何でも作れてしまうが故、誰の手も借りようとしない彼に。何か、何か一つ。
壊すことしか脳がない、不器用な自分に出来ること。強がりで素直ではないが、このイベントに肖って、作ってやれたなら。